投資育成会社が株主である会社の株式の評価            


  投資育成会社が株主である会社の株式の評価

事    例 1

・A社は、評価上の会社規模の判定が大会社となる会社である。

・株主は、数年前に第3者割当で投資育成会社が株を取得し、筆頭株主となっておりその持分が約26%、次が第三者割当以前まで筆頭株主だった同族グル−プが約24%、その他が外部の少数株主という構成になっている。

・投資育成会社が第三者割当により新株を取得する際には、個別通達により認められる評価方法により出資することができるため、
「同族会社株式の相続税評価額を引き下げる効果がある」と一般的に言われている。

・しかし、A社のようにすでに投資を受けて、投資育成会社が筆頭株主になっている会社の株式の相続税評価を行う場合は、通常どおり、相続税法の財産評価基本通達に基づき評価すればよいと考えているが、正しいか

解            説


・投資育成会社に株式を保有してもらうと、株価が安くなるのか、との質問であるが、第3者割当による投資育成会社の取得する株式の評価は、配当還元に準じて安い。発行株式数が増えるので、全体的に株価が薄まる効果は期待できるが、既存の同族株主の保有する株価については、「株主区分の判定」において、原則的評価で判断される場合が多くなる。

評価基本通達188−6

・同族株主以外の株主等が取得した株式の評価上の株主区分を判定する場合において、評価会社の株主のうちに投資育成会社(中小企業投資育成株式会社法に基づいて設立された中小企業投資育成株式会社をいう。)がある場合には、下記のように取り扱われる。


@投資育成会社が同族株主に該当し、かつ、その投資育成会社以外に
「同族株主に該当する株主がいない場合」には、その投資育成会社は同族株主に該当しないものとして、株主区分を判定する。


・30%以上株式を持つ株主が存在しないため、評価会社は
「同族株主のいない会社」となり、投資育成会社は同族株主となる。「15%以上の株式」を持つ株主は、原則的評価になる。



A投資育成会社が中心的な同族株主、又は中心的な株主に該当し、かつ、その投資育成会社以外に中心的な同族株主又は中心的な株主がいない場合には、その投資育成会社は、中心的な同族株主又は中心的な株主に該当しないものとして、株主区分を判定する。


・15%以上株式を持つ株主が存在しないため、評価会社は
「中心的な同族株主のいない会社、又は中心的な株主のいない会社」となり、投資育成会社は中心的な株主となる。「5%未満の株式」を持つ株主でも、原則的評価になる場合もある。



B上記@及びAの場合において、評価会社の議決権総数からその投資育成会社の有する議決権の数を控除した数を、その評価会社の議決権総数とした場合に、「同族株主に該当することとなる者があるとき」は、その同族株主該当することとなる者以外の株主については、同族株主のいる会社の同族株主以外の株主とする。


・投資育成会社が株式を所有することにより、
「従来の同族株主とその他株主が同列になってしまった場合」には、投資育成会社がないものとして判断する。

・つまり、従来の同族株主は原則的評価方法により、その他株主は、配当還元方式による。




・事例において、評価会社の議決権割合は、持株割合と議決権割合が同一だとすると、投資育成会社が26%、A同族グル−プが24%、その他が外部の少数株主ということなので、評価会社は
「同族株主のいない会社」となり、投資育成会社は中心的な株主となる。


・従って、A同族グル−プのうちに中心的な株主に該当する者がいない場合には、上記Aの取扱いが適用され、評価基本通達188の(3)により、評価上の株主区分の判定を行うこととなり、A同族グル−プのうちに「中心的な株主」に該当する者がいる場合には、同通達188の(4)により、評価上の株主区分の判定を行うことになる。


@


  投資育成会社の新株の引受価額

・投資育成会社が、
「第三者割当に基づき新株を引き受ける場合」の新株の引受価額については、下記の算式に基づき算出される評価額を基準としており、この評価額は税務上適正なものとして取り扱われている。

      評価額 = (1株当たりの予想純利益 × 配当性向) ÷ 期待利回り

・この算式は、
「投資育成会社が株式を取得する時の価格」である。これから分るように、評価基本通達188−2に定める配当還元方式に近い価額となるため、同通達179に定める類似業種比準価額や1株当たりの純資産価額を下回るものと思われる。


・従って、投資育成会社が評価会社の増資を引き受けた場合には、評価会社の1株当たりの年利益金額や純資産価額が、発行済株式数の増加によって薄まるために、評価会社の株式の相続税評価額が引き下げられることになるが、この点については、相続税等の課税上、特に問題にされることはない。