純資産価額方式における勘定科目の処理ポイント(3)
事 例 3 |
課税時期が6月10日の場合 |
課税時期 平成22年6月 10日 |
株式評価上の負債の取扱い | A氏の相続財産の構成 |
仮決算基準によった場合 | ・株主配当金、取締役賞与金を負債として計上 ![]() |
・株式(純資産価額計算において配当金及び賞与金が負債として計上されて評価されたもの) ・未収配当金(未収金銭債権) ・未収賞与金(未収金銭債権) |
直前期末日基準によつた場合 | ・株主配当金を負債として計上し、取締役賞与金は負債として非計上 ![]() |
・株式(純資産価額計算において配当金のみが負債として計上されて評価されたもの) ・未収配当金(未収金銭債権) ・未収賞与金(未収金銭債権)注 |
・「仮決算基準」による場合には、既に株主総会で「配当金」「役員賞与」が確定しているので、株価計算においても負債として「配当金」「役員賞与」計上する。
・「直前期末日基準」による場合には、3月31日現在で計算するので「役員賞与」は負債には計上できない。一方、「剰余金の配当」は、その配当基準日が3月31日なので、負債として計上できることになる。
・「注」により、株価計算においては役員賞与は負債計上することは認められないのに、相続財産には「未収賞与金」として加算されるのは何故か
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・税法では、原則として「仮決算基準」によることを定めているので、「直前期末日基準」を選択した場合には、株価計算においては役員賞与の負債計上は認めないが、相続財産には「未収賞与金」として計上することを要求している。 ・原則以外の評価方法を選択したのだから、つまり「仮決算」をせずに手を抜いて「直前期末日基準」を選択したのだから「不利益を受けてもやむを得ない」、との考えに基づいている。 |
課税時期が4月10日の場合 |
課税時期 平成22年4月 10日 |
株式評価上の負債の取扱い | A氏の相続財産の構成 |
仮決算基準によった場合 | ・株主配当金、取締役賞与金を負債として非計上 ![]() |
・株式(純資産価額計算において配当金及び賞与金が負債として計上されずに評価されたもの。ただし、配当期待権の価額を減額調整した後の価額) ・配当期待権(株式に関する権利) ・未収賞与金(注) |
直前期末日基準によつた場合 | 同 上 |
同 上 |
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・「配当所得」は、利子、配当、不動産といった「資産性所得」、別名「不労所得」と言われるものであり、株主総会で確定した時点で本人は既に死亡しているので相続人に帰属する。従って、各相続人が「配当所得」として法定相続分に応じて確定申告することとなる。 ・例え、後日の遺産分割協議書において配当に係る株式を相続する人が決まっていても、「決まっている相続する人として申告するのではなく」、「法定相続分で各相続人が所得税の準確定」をすることとなる。
・一方「役員賞与」は、「勤労性所得」と言われるものであるが、これは資産性所得と異なり本人が死亡しても相続人に移転しない。 ・株主総会で確定した時点では本人がすでに存在しないので本人の所得にはならない。かといって相続人が「給与所得」として法定相続分に応じて確定申告することはしない。 ・つまり「役員賞与」については、所得税は「非課税」となる。
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相続税法基本通達3−32 (被相続人の死亡後確定した賞与) ・被相続人が受けるべきであった賞与の額が被相続人の死亡後確定したものは、法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意する。 所得税基本通達9−17 ・死亡した者に係る「給与等」、「公的年金等」、及び「退職手当等」で、その死亡後に到来するもののうち、相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。 |
事 例 4 |
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・当該非上場会社に係る配当期待権相当額については、課税時期において当該非上場会社の配当金交付の効力が発生しているとして、取引相場のない株式等の評価明細書第4表の「比準価額の修正欄」で、比準価額から1株当たりの配当金額を控除したものと思われる。
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事 例 5 |
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1.確かに配当期待権は、直前期末である前年12月31日に発生していなければ、直前期末の資産にも計上されないので、資産に計上する必要は無い、という考え方もある。 2.一方、直前期末の資産に含まれているその配当期待権が発生している株式を「課税時期において評価する場合」には、「配当落ち後の価額に修正する」ことになるので、その見返りとして、配当期待権を資産に計上すべきであるという意見もある。
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